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獣医師からのアドバイス

獣医師からのアドバイス
1. 犬を飼う前に
犬を衝動買いしてはいけません。最低でも10年以上もの間、一緒に暮らすパートナーになるのです。
家族全員のことを考えてください。
購入動機が子供のためだったり、子供が面倒を見ることを期待してはいけません。
犬を飼うためには予防や治療にお金が必要で、適切な運動をさせるのには時間が必要です。人間社会で犬と暮らすためのお金と時間の管理は大人の責任です。

2. 飼う犬種について勉強する
犬は種類が多い上に性格も全く異なり、成犬体重も1kg~80kgまで様々です。
それぞれの犬種に見合った生活環境(寝床、食事、運動量など)を提供できないと、犬は問題行動を起こし、人間社会では生きていけないかわいそうな存在になってしまいます。
少なくとも飼うと決めた犬種についての特性については勉強会を開いてから迎えてください。

3. しつけは家族全員で
犬が吠える、遠吠えする、咬みつく、動くものを追いかける、そこらじゅうに排泄する、発情期の雌犬を追いかける、食べられるものが置いてあれば遠慮なく食べる、等は犬にとっては正常な行動です。
しかし、人間社会で生きていくためには不都合なことが多く、人がそれを問題行動と認識しているだけです。犬の当り前の行動を矯正し、人間に都合の良い行動だけをさせるためには、それ相応のしつけが必要です。 子供の義務教育と一緒で、その子の一生を左右します。
生後半年くらいまでは、家族全員で、しつけについて取り組んであげてください。

4. 排泄は家の中で!
多くの飼い主が、外で散歩させながら排泄、排便をさせるのが当たり前と思っておられます。
排泄させる場所は他人の家の玄関前、他人の駐車場、他人の畑、公共の道端などで、どこでさせても他人に大変な迷惑をかけています。
排泄は自分の家の敷地内または家の中にトイレを決め、そこでさせるべきです。
犬を飼っていない人、犬が嫌いな人とも気持ちよく生活するための、絶対に守るべきマナーです。

5. 犬の攻撃性の見分け方
以下の行動に1つでも当てはまると、攻撃性のある犬になる可能性があります。早めに獣医師に相談してください。
  • 人や他の動物に対して唸る
  • 家族に向かって歯をむき出す
  • 食べ物を取り上げようとすると咬みつく
  • 訪問者が近づいてくると、家族の後ろに隠れる
  • 訪問者があるとドアに向かって吠えながら走っていく
  • 遊んでいて興奮してくると、かかとに咬みつく
  • 動くものを追いかける
  • 飼い主を何分もじーっと見つめることがある

6. 犬の健康に与える要因
犬の健康は性格、年齢、性別、犬種、環境などの他、飼主の経済力が大きく関与します。予防のための検査、薬、ワクチンや、公衆衛生的にも重要なトリミング(定期的なシャンプー、耳掃除、爪切り)などを定期的に行い、健康を維持するためには、信頼できる獣医師、動物看護士、トリマーとのパートナーシップが必要です。

7. 寄生虫による環境汚染は飼主の責任
ほとんどの内部寄生虫は卵を便中に排泄します。この卵を他の動物や人が口にすることで新たな感染を起こします。
責任ある飼主は、便の後始末をきちんとして、公園、庭などの住環境を汚染しないよう、注意する義務があります。
公衆衛生上、寄生虫を家庭に持ち込まないために、年に4回程度、駆虫薬を投与しましょう。
万が一感染しても、その寄生虫の成長、産卵や新たな環境の汚染を予防できます。

8. 予防は飼主のマナー
混合予防注射、狂犬病予防注射、フィラリア予防、ノミ・ダニ予防など、犬が健康な生活を営むためには定期的な予防が必要です、動物は人以上に感染症にかかりやすいため、接触すれば病気の移しっこになってしまいます。
外でよその犬と接触する時、お互いがしっかり予防していれば気持ちよく、仲良く、安心して遊ばせられます。近年、飼主意識の向上に伴い、ペットホテル、トリミング、ドッグランなどでは予防をしていないと受付・入場を拒否されるケースが増えてきています。
例えばノミやダニをくっつけた状態で友人の家を訪問した場合、床やカーペットには、ノミの卵やダニが残され、友人宅の環境は大変なことになってしまっていることをご存知でしょうか。

9. 皮膚病に見られる7つの症状
皮膚病は見た目の症状に加えて、犬本人の自覚症状も強く、人に感染する場合もあります。
以下の項目は獣医師の診察が必要な皮膚病の症状です。
シャンプー時やブラッシング時によく見てあげることによって、皮膚病の早期発見、治療につながります。
  • 脱毛
  • デキモノ
  • 掻いたり舐めたりする行動
  • 赤くなる炎症
  • 色素の沈着
  • フケ
  • 腫瘍

10. 眼・耳の治療は飼主が主役
眼や耳は傷つきやすく、多くの疾患に対して敏感で、初期症状は気づきにくいものが多いようです。
治療は自宅で飼主が目薬を点眼したり、外用薬を耳に注入することで治療の柱となりますので、普段から眼をじっと見ること、眼や耳の付近を触らせることなどに対して抵抗しないように、しつけをしておくといざという時に役立ちます。

11. 眼の病気は気づきにくい
視力の低下や眼球混濁は飼主が気づきにくい症状ですが、非常に重篤な疾患の初期症状でもあります。目ヤニや流涙以外にも意識して光を当てて眼を見たり、正面や上側から眼を観察して、左右の大きさが違わないか、どちらかが飛び出ていないかなど、観察する習慣をつけましょう。

12. 多飲多尿や原因不明の体重減少に要注意
腎臓病、糖尿病などに特徴的な症状として、水をたくさん飲み、おしっこがたくさん出る(多飲多尿)、たくさん食べているのに痩せてくる、ということが多いです。
6歳(人で40歳に相当)以上で、当てはまる症状がある場合には、早めに動物病院で血液検査を受けさせてあげてください。

13. 肝臓は沈黙の臓器
慢性肝臓疾患の犬は、症状が現れる頃にはすでに多くの肝臓機能を失っており、治療が困難なケースがあります。
通常の健康診断では肝臓疾患を見抜くことは難しいので、定期的な血液検査が唯一の早期発見方法です。
6歳を過ぎたら、年に1回は血液検査を受けさせてあげてください。

14. 心臓の病気とは一生の付き合い
初期の心臓病は症状がほとんど見られず、獣医師の聴診により発見されることが一般的です。心臓病の治療は、心臓の負担を軽減したり、血液を送り出す縮小力を助けてあげることが目的で、基本的には一生涯を通じた投薬が必要になります。
経済的な理由や症状が無いから、という理由で治療を先延ばしにされるケースが多いのが残念なところです。心臓病の治療には、症状が無い今、治療を始める理由は、数年後に元気に寿命をまっとうさせてあげるため、という深い愛情が必要です。

15. お産の経験はすばらしい!
女の子であれば、自宅でお産させるのも、家族にとってかけがえのないすばらしい経験になります。
犬の妊娠期間は約2ヵ月、基本的には安産な動物です。交配のタイミングは、生理出血が始まってから約2週間後です。
妊娠したら、1ヵ月後に病院で超音波検査、出産直前にレントゲン検査を受けます。
出産12時間くらい前になると、体温が急激に下がりますので、妊娠末期は毎日体温を測りましょう。
念のため、主治医との連携を密にし、緊急の難産や帝王切開にも対応できるようにしておくことが重要です。

16. デンタルケアって大切!
犬は人に比べて、いわゆる虫歯にはほとんどなりません。しかし、歯石はたまります。
歯肉炎や歯周病は人以上に多く、酷い場合は抜歯が必要になったり歯肉やアゴの骨が溶けてしまうこともあります。
歯磨きは無理でも、デンタルケア製品は日々進歩しています。動物病院で積極的に相談して下さい。

17. 椎間板ヘルニアは早期治療が大切

ダックス、ペキニーズ、ビーグル、コーギー、シーズー、バセットなどは軟骨異栄養犬種といって、2歳くらいまでに椎間板の多くに軟骨性変性が起こり、3~6歳の間に椎間板疾患のピークがあります。椎間板ヘルニアの代表的な症状(歩くときに後ろ足がふらつく、よろける、背中を痛がる、抱く時にキャンと鳴く、段差やソファの昇り降りをしない、後肢での起立不能、排尿ができない、漏れるように排尿してしまう、後肢の先を強くつねっても痛みを感じない、横ばいになって動けない、呼吸が荒い等)が見られたら、即座に動物病院を受診してください。時間が経ち過ぎると、手術しても治らないこともあります。


18. アレルギー疾患は飼主次第!?

動物にも当然アレルギー疾患があります。ハウスダスト、花粉、カビ、ダニ、フードの原材料など、アレルギー疾患の原因(アレルゲン)は非常に多く、しかも単独ではありません。日ごろから1.定期的なシャンプーによるアレルゲンの洗い流し、2.定期的にフロントラインなどをつけることによるノミやダニ感染の予防、3.フードの銘柄を限定(あれこれあげない)することによる摂取アレルゲンの特定、に気をつけてあげることで、アレルギー疾患の予防に役立ちます。


19. 安楽死について
犬は法律的にモノとして扱われ、人道上の理由があり、獣医師による安楽死であれば法的責任を問われることはありません。
あらゆる手を尽くしても痛みや苦痛を取り除くことが出来ない場合、安楽死は飼主としての最後の愛情なのかもしれません。